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カーボンクレジット10の原則:カーボンクレジットは正の外部性を促進する有効な施策だが、カーボンニュートラルに向けて企業が安易に依存できるものではない。

  • takehikomizukami
  • 2023年8月19日
  • 読了時間: 4分

GHG排出増加による温暖化・気候変動、生態系破壊などのサステナビリティ課題は、企業を中心とした経済活動がもたらすマイナスの影響、負の外部性です。この基本的解決策としては、外部性を生み出している経済主体に、そのコストを負担させる「内部化」があります。炭素税などは、GHGを排出する企業にそのコストを負担させようとする内部化の施策です。


これは負の外部性を内部化するやり方ですが、経済活動が生み出す他者へのプラスの影響である正の外部性の創出を促すために、正の外部性を内部化する方法もあります。GHG排出を削減した場合にクレジットとして価値が得られるカーボンクレジットは、経済活動におけるGHG削減が生み出す気候変動の緩和という正の外部性の創出を促す施策です。


これまでの政策は負の外部性を減らすことが中心でした。人々が同程度の利益を得ることよりも損失を回避することを好むこと、一般的に利益よりも損失のほうが金銭的価値に換算しやすいなどがその背景にあります。


カーボンクレジットについても、適切な排出削減効果の評価が難しく、不適切な評価が行なわれ、実際の削減効果よりも過大なクレジットが発行された場合、その使用が社会全体での排出量の増加をもたらすおそれがあります。また、GHG排出削減を実施する費用よりも、クレジットの方が安価な場合には、GHG排出削減活動が実施されず、結果としてGHGを多く排出する状態にロックインされることが考えられます。


サステナビリティに真摯に取り組む企業は、カーボンクレジットが抱える課題を認識しており、GHG排出のネットゼロ目標実現に向けて安易にクレジットに依存しないようにしています。例えばネスレは、「カーボンクレジットを使ったカーボンニュートラルはグリーンウォッシュではないか」との疑義が欧米で広がっていることも踏まえ、カーボンクレジット

の利用を中止し、事業とバリューチェーンにおけるGHG排出削減に注力することとしています。


こうした懸念や動きを踏まえ、自主的なカーボンクレジット市場(VCM)の国際共通基準の作成作業を続けている民間団体Integrity Council for the Voluntary Carbon Market(ICVCM)」は、VCM取引の基準となる「コア・カーボン原則(Core Carbon Principles(CCPs))」を取りまとめました。コア・カーボン原則は、以下の3分野10原則で構成され、VCMの信頼性を担保するため、追加性、永続性、ダブルカウント禁止などを規定しています。これらの原則に合致するクレジットは「CCPs適合クレジット」の認証を得て、グローバル取引が可能となります。


【ガバナンス分野】

① 効果的なガバナンス

透明性・説明責任・継続的進歩・クレジットのクオリティを担保する効果的なガバナンスが存在


② トラッキング

緩和活動およびクレジットを特定・記録・追跡する登録簿が存在


③ 透明性

誰でも電子フォーマットで包括的で透明な情報が得られ、緩和活動を精査可能


④ 第三者による審査・検証

独立の第三者による緩和活動の審査・検証が要件化されている


【排出インパクト分野】

⑤ 追加性

クレジット収益のインセンティブがあることにより、GHG排出削減/除去が実現する。


⑥ 永続性

GHG排出削減/除去が永続的、または反転リスクへの対応・補償がなされている。


⑦ 排出削減/除去量の定量化

保守的アプローチ、完全で科学的な方法による緩和活動のGHG排出削減/除去定量化


⑧ ダブルカウント禁止

緩和活動によるGHG排出削減/除去のダブルカウント(二重発行、二重訴求、二重利用)が行われていない。


【サステナブルな発展分野】

⑨ 持続的発展の利益とセーフガード

緩和活動が広く確立した業界ベストプラクティスや社会・環境セーフガードを遵守または超えるためのガイダンス・ツール・コンプライアンス手順があり、ポジティブな持続可能な発展に向けたインパクトを創出


⑩ ネットゼロ移行への貢献

今世紀半ばまでのネットゼロ目標達成と不整合なGHG排出、技術、炭素集約的な活動へのロックインを回避


今後は、クレジットにこれら原則への適合が求められるようになるでしょう。「クレジットを使えば何とかなるだろう」という安易な考えで、カーボンニュートラル目標を設定している企業は、自社およびバリューチェーンのGHG排出削減を真剣に考えるべきです。


(参考)

「正の外部性」をレバレッジする(フランク・ネイグル、SSIR2022 VOL2)

 
 
 

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