top of page
検索
takehikomizukami

カーボンオフセットによる地方創生の可能性

日本を含む主要国が、2050年までのカーボンネットゼロを目標として掲げ、さらにCOP26を控えて、2030年までにピーク時から50%前後のCO2排出削減の目標を掲げている。2021年には、新型コロナ禍からの経済活動の再開でCO2排出が急増することが見込まれる中、9年間で大幅削減するには、これまでの延長線上にない新たな取り組みが必要となる。こうした政府目標の設定を受けて、企業も急速に動き始めている。


カーボンネットゼロに向けては、企業は、まず自社バリューチェーンにおいてCO2排出削減を進めることが基本だが、削減できずに残されたCO2はオフセットする必要がある。企業のCO2排出削減目標設定に強い影響力を持つSBTイニシアチブは、企業のネットゼロ目標設定のルール作りを進めているが、この中で、オフセットについて、大気中からCO2を吸収・固定・隔離することを求めている。これを受けて、オフセットの対象としてのCO2を吸収・固定・隔離する活動へのニーズが高まるだろう。


カーボンネットゼロに向けてオフセットを活用する具体的なイメージとして、ネットフリックスの例を挙げよう。動画配信サービス世界最大手のネットフリックスは、2022年末までのCO2排出ネットゼロを目標に掲げている。同社の2020年のCO2排出量は110万トンで、50%がオリジナル作品のコンテンツ制作、45%が企業活動、5%がストリーミングとなっているが、以下の3つのステップでCO2を削減する予定だ。


ステップ1:事業活動からのCO2排出を削減する。(スコープ1,2について2030年までに45%削減する)

ステップ2:熱帯雨林など、既存のCO2吸収源の保全プロジェクトに投資して、オフセットする。

ステップ3:草地、マングローブ、土壌といった自然生態系の再生(リジェネレーション)など、大気中のCO2除去プロジェクトに投資して、大気中のCO2を除去するプロジェクトに投資して、オフセットする。


その他、ネットフリックスは、環境や社会のサステナビリティをテーマにしたさまざまなドキュメンタリー映画・番組を配信することで、人々のCO2排出削減などを啓発しているが、それはさておき、ネットフリックスのネットゼロに向けたCO2排出削減においては、自然の保全や再生に投資することでCO2排出をオフセットする部分が大きい。


今後、企業がCO2排出ネットゼロに向けた活動を進める中で、こうした自然の保全や再生への投資を通じたカーボンオフセットへのニーズが高まるだろう。日本の地方は、森林保全、再生農業、海藻育成などのカーボンオフセット資源を豊富に有するところが多い。これまで経済的価値がないとされてきた自然が、新たな価値を生み出す時代になってきている。地方には大きな機会が訪れている。

閲覧数:28回0件のコメント

最新記事

すべて表示

非財務と財務の相関関係や因果関係を可視化する企業が増えているが、現在の取組を肯定するのではなく、戦略や将来ビジョンの納得性を高め実現するために使うべき

日本企業では、非財務と財務の相関関係や因果関係を可視化するのが流行っているようだ。非財務指標と企業価値の相関関係を統計学的に分析する、非財務活動と企業価値との因果関係(の粗い仮説)をロジックツリーのような形で構造化するなどの取組みが行われている。...

「自社のサステナビリティ」は日本独自の言い方。日本のサステナビリティ経営をガラパゴス化にしないように注意が必要

以前、 日本型CSVとして日本企業の特長である「継続力」を活かしたCSVがあり、東レの炭素繊維などを代表例としてあげました 。 日本は、世界的に見て長寿企業が多く、200年以上の長寿企業の数は、世界の4割以上を占め、2位ドイツの2倍以上とされています。ゾンビ企業を生かすこと...

本物のサステナビリティ経営の5つの要諦

2025年は、トランプ政権誕生などもあり、ESGに逆風が吹くと考えられている。しかし、世界のサステナビリティに向けた動きは長期的に不可逆的なものだ。短期的に逆風が吹くときこそ、本物のサステナビリティ経営を着実に進めることが、長期的な企業価値の創造という観点からも重要となる。...

Comments


bottom of page