SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」にもありますが、持続可能なまちづくりは、サステナビリティの観点で非常に重要であり、企業にとっての機会も多く生み出します。例えば、「手ごろな価格の住宅」、「スマートシティ」などは、企業にとっての魅力的な機会を提供します。
「手ごろな価格の住宅」は、SDGs実現に向けた動きが2030年までに年間12兆ドルの市場機会を生み出すとする、SDGsとビジネスに関するレポートで良く引用される『より良きビジネス、より良き世界』(ビジネスと持続可能な開発委員会)でも潜在市場機会が大きいものとして挙げられており、2030年に最大1.08兆憶ドルの市場を生み出すとされています。2030年には、世界人口の60%が都市に住むと予測される中、住居や建物の建築・改築の巨大な市場が生み出されますが、一方で、都市住民の多くは従来の住宅を購入するだけの収入がなく、「手ごろな価格の住宅」を提供するイノベーションが求められています。
「手ごろな価格の住宅」に関するイノベーションの事例としては、貧困層向けの4,000ドル、24時間で建てられる3Dプリントの住宅が開発されています。米国の3Dプリント建設会社ICON社がNPOと協働で開発したもので、持ち運び可能な建築用3Dプリンターを用いて、快適で耐久性も高い600-800平方メートルの一軒家を短時間で安価に建てられるというものです。廃棄物もほぼ出さないといいます。この住宅自体は、途上国の農村向けに開発されたものですが、都市での「手ごろな価格の住宅」にも応用可能でしょう。
イケアは、難民向けに1,000ドル程度のシェルターを開発しています。難民支援機関と協働して開発したもので、太陽光発電、断熱材を用いて、従来の難民テントを代替する優れた機能を有するものです。国連難民高等弁務官事務所によると、世界で紛争や迫害により家を追われた難民は、2020年末時点で8,000万人を超えています。難民の10%程度はテントに住んでいますが、多くは電気もなく、暑さ寒さを避けるための断熱性もないといいます。イケアのシェルターの活躍する機会も多いでしょう。このシェルター自体は、難民支援が目的ですが、ここで培われた技術やノウハウは、リバースイノベーションとなって、手頃な価格の住宅の提供に広く活かせる可能性があります。
「スマートシティ」に関して、スマートシティの先進都市では、都市のいたるところにセンサーが設置され、センサーから得られた情報がシステムで一元管理されています。そのデータをもとに、散水・噴水・上下水道システムなどを自動運転や遠隔操作で効率的に運用して水資源を節約し、街路灯ごとの明るさや点灯・消灯時間の制御によりエネルギー利用を効率化しています。信号機の最適化による交通渋滞の緩和なども進められていますが、自動運転の普及でさらに進化し、将来的には物流などの交通の一部はドローンで代替されるでしょう。
スマートシティの初期の優良事例として、バルセロナのごみ収集の取り組みがあります。道路わきに置かれたごみ収集箱に、近隣の住民がごみを捨てていく中、このごみを回収する車両が回収作業中道路をふさいでしまい、渋滞が起きるという問題がありました。そこで、ごみ収集箱にセンサーを付け、収集箱のなかのゴミの量を検出、回収すべきタイミングを把握することで、無駄なごみ回収を減らし、渋滞を解消し、CO2の削減にも貢献しています。こうしたスマートなごみ収集は、バルセロナの成功の後、日本を含む世界各地に広がっています。
スマートシティは今後巨大市場に成長すると予測されており、センサーなど日本企業が強みを持つIoT関連ハードウェア市場も拡大する見込みです。日本企業は、統合ソリューションを提供する企業の下請けとして、求められる製品・技術を提供するだけではなく、社会の動向を先読みして把握し、社会課題解決に必要な技術を能動的に開発して広げていくビジネスモデルの構築が求められます。社会課題解決ビジネスには、先読み、能動的対応が重要です。
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