パーパスは、経営の重要概念としてかなり浸透し、パーパス・ステートメントを掲げる企業は増えています。しかし、ほとんどの場合、それらしいパーパス・ステートメントを掲げるだけで、戦略や企業文化に落とし込めていません。それでは、社員や顧客の期待に応えることができず、社会にインパクトを与えることもできません。
多くの企業のパーパスは、言葉だけのものとなっており、①社会における意義、②信憑性、③利益とのつながり、④真剣さ、が不足しています。
社会への意義を示すためには、パーパスは、企業が本質的に貢献すべき社会への価値、解決する社会課題を明示する必要があります。ダノンが「すべての年齢の人々に健康な生活を届け、幸せを拡げる」を掲げ、戦略をSDGsと関連付け、乳児に栄養を提供するための専門部署を設置し、「最初の100日の健康と栄養」にコミットしているのは、好例です。
信憑性に関して、パーパスは、企業文化や歴史に根差している必要があります。また、企業のオペレーションに落とし込まれ、重要な経営の意思決定をする上でのガイドとなる必要があります。パーパスに反する戦略や行動はとってはなりません。パタゴニアは、環境問題を解決することをパーパスに掲げ、無駄な服を買わないようキャンペーンしています。パタゴニアの一貫したメッセージ、行動は、パーパスの信憑性を高めています。
また、パーパスは、企業の収益につながるものである必要があります。そうでなければ、パーパス実現に向けて企業が投資し続けることができず、社会に大きなインパクトを与えることもできません。短期的には、パーパスに基づいて利益を犠牲する意思決定をすることもあるかも知れませんが、長期的により大きな利益につながる必要があります。ディスカバリー・ヘルスは、「人々をより健康にし、人々の生活を守る」というパーパスを掲げ、人々の健康への意識を高め、健康的な活動を促進し、それが健康保険の収益を高めるというビジネスモデルを構築しています。これにより、パーパスと収益が完全に一致し、ディスカバリー・ヘルスは、ビジネスモデルに再投資してさらに進化させています。
そして、パーパスに真剣に取り組むには、企業のすべてのリーダーおよびマネージャーが、パーパスの実現に責任を持つ必要があります。エネルは、2018-2020の戦略計画において、CO2排出削減と安価なクリーンエネルギーをアフリカ、アジア、南米を中心に300万人に届けるというコミットメントを掲げていますが、この実現をパフォーマンス評価とインセンティブの仕組みに組み込んでいます。すべてのリーダーおよびマネージャーが役割に応じて、パーパスに貢献するようにしています。
パーパスは、形式的なものでは意味がありません。これからパーパスを設定しようという企業もあるかと思いますが、この4つの視点をしっかり持って、パーパスを設計する必要があります。
(参考)この記事は、FSGのブログ記事を参考としています。
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