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「食の単一化」が進む時代、ローカルの食文化を守ることが、生態系と食料の持続性を維持する

takehikomizukami

先日のNHKスペシャルで「食の単一化」がテーマになっていました。「金に糸目をつけず世界の果てまで美食を求めるフーディーと呼ばれる人たちがいる一方で、世界の大半がわずかな種類の穀物由来の加工食で胃袋を満たす極めていびつな時代に私たちはいる。80億人の食を満たすために、トウモロコシや大豆などわずか数種類の穀物由来の加工食に依存する結果、地球環境に大きな負荷がかかり生態系が破壊され、加工食による糖、油により肥満が増え、糖尿病のリスクが高まっている。」とのことです。


食の単一化の話を聞くと、元ダノンCEOで現ISSB議長のエマニュエル・ファベール氏が以前のインタビューで、「ローカルの食文化を守ることが、生態系と食料の持続性を維持する」と語っていたことを思い出します。以下、再掲します。


「過去、食品業界は世界のより多くの人を飢えから救うため、できるだけ安いコストで食料を供給するため、大量生産による規模のメリットを追求してきた。しかし、世界各地で肥沃な土壌や水が枯渇してきているほか、人類が食料を数種類の「種」に依存するようになった。人類の食料をわずかな「種」に依存することは、とてもリスクが高いことだ。」


「これから大切なのは、人類が必要な食料だけを増やすのではなく、自然の生態系を全体で保全することで、これを「アリメンテーション(栄養・滋養)・レボリューション」と呼んでいる。この取り組みなくして、世界の資源を維持していくことはできない。これからは、生態系を維持していくためにも、世界各地で続いてきた食文化、食習慣、レシピ、食資源を永続させていく必要がある。ダノンは、あらゆる生態系を維持していくというゴールの下に、ローカルでのビジネスを考えている。大量生産の時代から事業環境が変わり、「ローカルに徹するグローバル」に答えがあると信じる。」


「もともとダノンには、経済成長を追うと同時に、社会貢献を果たす企業でなくてはならないという「デュアルコミットメント」という企業哲学がある。しかし、成長する中で利益重視となり、事業ポートフォリオが多角化し過ぎていたため、1996年に就任した2代目CEOフランク・リブーがダノンの次の20年を見据え、企業哲学を見直し、ダノンが手がけるべきビジネスを絞り込んだ(「健康」をミッションとし、ビール事業、ビスケット事業などを売却し、ベビーフード事業などを買収)。ダノンの経営陣には、常に20年先を見据えた経営が求められる。私自身も、2030年のダノンを見据えてビジネスを考えている。」


「株式市場からの短期的利益を求めるプレッシャーはある。確かに、投資家には利益を重視する人もいるが、それ以上に、企業の継続性を求める人が増えている。私はここに、投資家との対話の可能性を見出している。我々が、なぜ、生態系の保全、貧困対策、新興国の酪農家支援に積極的に取り組むのか、これらの取り組みを長期的に続けることが、ダノンの利益成長につながることを丁寧に説明する。そして、大半の投資家は理解を示してくれる。」


「こうした姿勢は従業員にも同じ効果を発揮する。給料や報酬以上に、ダノンが社会に対して貢献している、という実感にやりがいを感じている人が多いと思う。これが短期的な頑張りも生み出す。逆接的だが、長期的な視点で利益を考えることが、短期的なゴールを達成する力を生むと考えている。」


ファベール氏自身は、株価が競合に見劣りすることなどによりダノンCEOを解任され、長期的なビジョンと短期的な収益のバランスをとるサステナビリティ経営の難しさを示すことになったのですが、その後ISSB議長として復権しました。


サステナビリティ経営の課題はさておき、ファベール氏が言っている「ローカルの食文化を守ることが、生態系と食料の持続性を維持する」という考えは非常に重要で、食や農業に携わるひとは常に心に留めておくべきものです。


(参考)

ダノンファベールCEOインタビュー「規模追及はもう限界、理念を軸に会社作り直し」日経ビジネスDigital

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