伊藤忠は統合報告で高い評価を得ている、統合報告書のアワードなどの常連だ。トップメッセージへの評価も高い。最新の統合報告書でも、以下のような岡藤CEOの生々しい言葉が並べられている。
「本を一冊読むにしても、常に経営に対して問題意識を持ち続けていると、必ず何らかの教訓を得ることができます。私は常日頃、身近な出来事から会食でお聞きしたお話に至るまで、気が付いた時すぐにメモすることを習慣付け、経営のヒントを探っています。こうして何事からも学び続けようとするのは、一人の経営者として、常に「企業価値を更に高めていきたい」と強く思うためです。上場企業としての企業価値向上とは、言い換えれば株価、時価総額を上げることです。日々の株価の上げ下げに一喜一憂する必要はないものの、上場企業の「通信簿」として、常に向き合っていくべき最も重要な指標であることは言うまでもありません。」
ひとつ前の日経新聞「私の履歴書」は、岡藤氏だった。統合報告書のトップメッセージにもある業績、企業価値へのこだわりは、私の履歴書でも随所に見られた。特に、財閥系商社への対抗意識は猛烈なものが感じられた。
岡藤氏のような業績を上げること、競争に勝つことにこだわりの強い人は、サステナビリティにはあまり関心がない場合が多い。しかし、伊藤忠は、サステナビリティ重視という感じではないが、自社ビジネスに則して本質を捉えた取組みを進めている印象だ。これには「三方よし」という伊藤忠の企業理念も貢献していると思うが、「私の履歴書」にも重要なキーワードがあった。
曰く、「業績や市場からの評価では財閥系と伍するところまできた。だが、私は伊藤忠をもっと良い会社にしなければならない。」「伊藤忠をどんな会社にしたいか。その尺度は業績や株価だけではない。それより社員たちが家族や世間に誇れるような立派な会社にしたい。」「伊藤忠を社員たちが誇れるような、天国の母に誇れるような日本一の会社にしてみせる。それこそが私にとっての約束であり最後になすべき仕事だ。」
「良い会社」「社員が家族や世間に誇れる立派な会社」、そうした会社を創りたいという思いが、業績や株価だけではない、サステナビリティにも配慮した企業経営につながるのではないか。
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