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「形だけのサステナビリティ」は何が問題なのか?

2016年頃はSDGsバッジを付けているビジネスパーソンはほとんどおらず、ニューヨークの国連本部で買ってきたSDGsバッジは話のネタになった。しかし今は、多くのビジネスパーソンがSDGsバッジを付けており、SDGsバッジを付けていると気恥ずかしいくらいだ。SDGsバッジが普及している様子からは、日本はSDGs先進国のように見える。


本年1月に発表されたTNFDアーリーアダプターの登録企業数は、日本が80社で世界一多い。TCFD賛同企業数も日本企業は1500社近くが賛同し世界一多かった。SBT認定企業数も日本企業は900社を超え世界一だ。CDPのAリスト企業数も日本はトップだ。これだけ見ると日本はサステナビリティ/ESGの先進国だ。


しかし実態はどうか。SDGsの達成度・進捗状況に関するレポートSustainable Development Report 2023では、日本の達成度は世界21位で先進国とは言えない。TCFDやSBTに関連するSDG13「気候変動に具体的な対策を」、TNFDに関連するSDG14「海の豊かさを守ろう」およびSDG15「陸の豊かさも守ろう」は日本の進捗が遅れている課題として挙げられている。


これはどういうことか。国別のSDGsの進捗は企業だけの問題ではないが、日本企業が情報開示のフレームワークに適合するといったことに横並びで注力する「形だけのサステナビリティ」となっていることも大きいのではないか。


最近は、サステナビリティ経営の最も重要な取り組みであるマテリアリティ特定についても、CSRD/ESRSができて第三者保証も求められるということで、ガイドラインどおりの定型プロセスによる形を重視したマテリアリティ特定が行われつつある印象だ。


マテリアリティ特定ではコンサル会社を使うケースも多いが、最近のサステナビリティコンサルタントと称する人々の多くは、サステナビリティの知識や理解が十分でない。これはサステナビリティのニーズの拡大に伴い、にわかサステナビリティコンサルタントが増えているためだ。企業側でも同様で、「最近サステナビリティ担当になりました」という人が多い。


委託側も受託側もサステナビリティを十分理解していない中で、マテリアリティ特定では、いわゆる有識者と言われる人々に頼ることも多い。しかし有識者も、マクロ的な一般論はうまく話すが、幅広いサステナビリティイシューのそれぞれに精通し、さらに企業のビジネスモデルに当てはめて適切に評価できる人は極めて限られる。企業、コンサルタント、有識者すべてが適切なマテリアリティ評価ができない状況では、マテリアリティは形だけのものとなる。


では、形だけのサステナビリティは悪いのか?コンサルを使っても数千万円で、人件費などのコストもかかるが、それで形を整えてESG評価機関などの評価が上がり、ESG投資の対象となる可能性が高まるならそれで十分ではないか。ESGなどのランキングが上がれば何となく気持ちもいい。そういう考えもあるだろう。


サステナビリティの専門家/有識者の中でも「形から入っているとしても、(サステナビリティ担当部署やサステナビリティ委員会などの)体制ができて、少しずつでも前進すれば良いのではないか」という意見もある。しかしサステナビリティを推進、加速する立場にある人がそういう考えでいいのだろうか。「サステナブルな世界に向けた変化の促進、そのための課題解決に貢献できない。」それが形だけのサステナビリティの最大の問題だろう。


企業経営の観点から見た場合はどうか。形だけのサステナビリティを追求していると、情報開示のフレームワークがどうなったとか、欧州の法制度がどうなったとかが関心事の中心となり、サステナビリティに向けた世界の本質的潮流に目がいかなくなる。サステナビリティ経営を推進すべき立場にある人々が、サステナビリティの本質的動向を感度良くキャッチし、その経営への意味合いを洞察する「サステナビリティ・インテリジェンス」機能を果たすことができない。


そのため世界がサステナビリティに向けて変化する中で、自社にとってのリスクや機会を感度良く把握し企業経営に反映できない。それが経営戦略の判断を誤ること、ビジネス機会を逃すこと、リスクへの対応が遅れることにつながり、長期的な企業価値に大きく影響する。「形だけのサステナビリティ」では、サステナビリティに向けた長期的変化に適応した経営戦略が描けない。


「形だけのサステナビリティ」は、足元では少々のムダ金やリソースの浪費につながるだけだが、長期的には「適切なサステナビリティ」で高められたはずの企業価値を毀損する。それが問題だ。

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