検索
  • takehikomizukami

「ラベル貼り」では、SDGsに貢献したことにならない!

日本でも、SDGsのロゴを自社の既存の活動に紐づけて、「こんな貢献をしています」とアピールすることが、SDGsの実現に向けて何の意味があるのか?という意見はあります。これまでの活動の延長上では持続可能な社会を実現できないから、国際的なゴールを定めて、新たな革新的取り組み、さらなる野心的取り組みを促進しようとしているのに、「もう十分貢献しています」「今の延長線上で十分です」と宣言することは、SDGsの推進に向けては逆効果にもなりかねません。


海外でも状況は似ているようで、CSVの提唱者の1人であるマーク・クラマー氏らが、「今のままではダメだ”Business as Usual Will Not Save the Planet”」と警鐘を鳴らしています。クラマー氏らは、以下のように現在の問題点を指摘し、今後の取り組みへの提言をしています。


ほとんどの企業のSDGsへの取り組みが「ラベル貼り」に過ぎず、米国大企業は平均9つのSDGsに貢献しているとしているが、コアビジネスで新たな取り組みをしている例はなく、社会貢献やCSRで新たな取り組みを進めている企業ですら非常に少ない。


企業セクターは、政府や市民セクターより数倍から数十倍大きなインパクトを創出できるが、それは社会貢献やCSRではなく、ビジネスそのもので貢献しスケールする場合のみである。DSM、ノボザイムズは、SDGsで製品開発の優先順位を決めており、エネルもSDGs実現に向けて再生可能エネルギーへのシフトを進めているが、これらの企業は例外で、ほとんどの企業はSDGsに本質的な貢献をしていない。


SDGsの表現は広くてあいまいであり、どのような活動でも、SDG3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」に貢献していると言うことができる。その点、MDG4「乳幼児死亡率の削減」としていたMDGsのほうが明確な目標を示しており、組織の明確なコミットメントを求めていた。この点では、企業セクターは対象としていなかったものの、MDGsのほうが良かった。


企業がSDGsに本気で貢献しようと思うなら、以下が求められる。


① 本当に貢献できるSDGsを特定し、具体的な目標を定めるべき

「9つのゴールに貢献しています」は、意味がない。本気で9つのゴールに貢献できる企業はいない。1~3のビジネスの中心に関わるゴールを設定すべきだ。また、17ゴールではなく、169のターゲットレベルでの具体的な貢献にコミットすべきだ。


② ビジネス機会にフォーカスすべき

利益や成長に結びつくからこそ、取り組みをスケールアップでき、SDGs実現に本質的に貢献できる。そのため、SDGsの取り組みは、CSR部門ではなく、経営企画部門、事業部門が責任をもって推進すべきだ。(SDGsは年間12兆ドルのビジネス機会を提供している。)


③ 意味のある中期目標を設定すべき

2030年は進捗を測定するには先過ぎる。SDGs貢献に向けた3-5年の具体的で測定可能なターゲットを設定し、進捗を報告すべき。

その他、社会貢献ではなく、製品・サービスへの投資をすべき。ネガティブインパクトや矛盾にも正直に取り組むべき、としています。


また、国連に対しても、以下のような提言をしています。


・企業のコミットメントをレビューし承認するなどの仕組みを構築すべき。

・各社のコミットメントを統合。全体としてSDGs実現に向かっているかを確認すべき。必要に応じて新たな取り組みを促すべき。

・マルチセクター・パートナーシップを促進すべき。SDGsは共通言語として、政府、企業、市民セクターを共通のゴールに向けて統合するポテンシャルがある。


海外でも日本と似たような状況だということで、企業の方は、安心してはいけません。クラマー氏らの言っていることはもっともです。SDGsはCSVで差別化する具体的な機会を提供してくれていると信じ、ビジネス機会としての可能性を真剣に考えてみてはどうでしょうか。

112回の閲覧0件のコメント

最新記事

すべて表示

脱炭素政策においてポーター仮説は機能するか?

ポーター仮説というものがあります。「適切に設計された環境規制は、費用低減・品質向上につながる技術革新を刺激し、その結果国内企業は国際市場において競争上の優位を獲得し、他方で産業の生産性も向上する可能性がある」というものです。 ポーター仮説については、いろいろ議論があるようですが、個人的には全く違和感ありません。イノベーションは、課題と解決策の新しい組み合わせです。具体的に新しい課題が提示され、しか

「オランダの誤謬」をどう解決するか? -人新世の「資本論」から-

人新世の「資本論」(斎藤幸平著、集英社新書)に、「オランダの誤謬」というコンセプトに関する記述があります。オランダでは経済的に豊かな生活を享受しているが、一方で大気汚染や水質汚染の程度は比較的低い。しかし、その豊かな生活は、資源採掘、製品生産、ごみ処理など、経済発展に伴い生じる環境負荷が発生する部分を途上国に押し付けているからこそ実現している。この国際的な環境負荷の転嫁を無視して、先進国が経済成長

政民財のサステナビリティトライアングルを創る!

以前、「政官財の鉄のトライアングル」という言葉がありました。政策決定における政界、官界、財界の癒着構造、政治家への献金・票、官僚への権限・天下り、業界への予算・法案という便益で3者が結びつき、国益・国民益よりも省益・企業益を優先する政策決定がなされることを示すものです。旧時代のネガティブな意味合いのトライアングルです。 新しい時代には、サステナブルな社会を築く、別のトライアングルが必要です。最近読

Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.